物置と化した来客用の机の上に、一つの鉢植えがあった。
そこに植わっているのは一株の植物。
地球の花に例えるならば、チューリップ。芯の強そうな一本の茎と、土に近いところから生える長めの葉。その頂点のには花とは言いがたい二つの物体がついていた。横長の長方形をしたそれは、たらこのような赤い色をしているが謎の粘液でてらてらと光っている。似てないのに唇に見えてくる辺り気持ち悪い。
「なんだ、これ?」
手にした小包を置くことも忘れ、ゾッドはそれに近づこうとした。
「近づいちゃだめ!」
が、ゼノンの一喝で阻止された。


二人は朝から文化局の手伝いをさせられていた。弟子であるということは文化局職員同様に扱われる…もとい、文化局に所属しているということであるらしい。
力のあるゾッドは倉庫やら何やらの運び出しを手伝わされ、ゼノンは資料室の整頓を手伝わされていた。
朝、ゼノンが局長室にある資料を取りに行ったところ、局長に会った。
局長は言った。
「あら、いいところに。机の上に花があるんだけど、半径1m以内には絶対近寄っちゃ駄目よ?いい?凶暴だから絶対近寄っちゃ駄目。私はこれから用事があるけど、あなたたちは仕事が済んだら帰りなさいね。」
それを言い残して彼女は去ってしまった。


"半径1m以内に近づくなかれ"
確かに鉢にはそう書かれたカードが貼られていた。入り口と逆側に向かっていたが。
凶暴…というのなら、もしかすると食肉性なのかもしれない。
その植物を避けるようにゾッドは奥の執務机に小包を置いた。
彼の仕事はこれで終わった。
「換気のために窓開けるね。」
ゼノンは局長室の整頓をしていたらしい。部屋最奥の窓に手を掛け、少し開いた。
窓から流れ込んできたのはそよ風では無く、突風であった。少しだけ開かれた窓は風に押されて全開し、整頓された書類が一気に吹き飛んだ。
予想外の被害にゼノンは慌てて窓を閉めた。
「うわっ!!!」
後ろから悲鳴があがった。すわ何事かと後ろを振り返れば、ゾッドの右側の髪に例の植物が噛み付いていた。
つまりは突風に煽られたゾッドの髪が半径1m以内に入ってしまったのである。
「本当に凶暴だぁ。」
「感心してる場合かっ!!」
しゅーという音をたてて植物の唇(?)が出す粘液がゾッドの髪を融かしていく。髪がちぎれゾッドが自由になると、植物は再び元の直立姿勢に戻った。
二人は唖然とするしかなかった。





ゾッドの長髪は右側だけ肩口まで短くなってしまった…。
表面の粘液は強い溶性を持ち、乾くまでゾッドの髪を融かし煙まで上げていた。おかげで毛先はボロボロだ。
「どうしよう…」
さすがにこれではみっともないと嘆くゾッドにゼノンは一つ提案した。
「私が整えてあげるよ☆」

数分後。ゾッドは椅子に座らされ、防水性のケープを肩にかけられた。
後ろではゼノンがどこから調達してきたのかわからないエプロンをかけ、はさみと櫛を持ってうろうろしている。
エプロンにはなぜか「BarBar」とプリントされていた。
地球の床屋のような状態だが、部屋の外に掲げられているプレートには「実験室」と書かれている。

とりあえず痛んだ箇所を切り落とす。
被害を免れた髪もそれに合わせて切っていく。
結果、ぼさぼさのくせっ毛なのに毛先だけ揃っているという妙なおかっぱ(?)になってしまった。
幸い床屋と違ってゾッドの前には鏡はない。
「じゃ、僕はこれで…」
気付かれる前にと、ゼノンはこそこそと逃げ出した。




数秒後に怒号が響く。
「何しとんじゃてめぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
「ごめんなさーい!!!!!!!!!!!」
「虎刈りにしてくれるっっっ!!!!!!!!!!!!!!」
「いやああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




あぁ、今日も平和だ。






X&Z小説その2っ!
兄弟弟子設定にしたらこんなネタが出てきました。
動かしづらいキャラだなーと思っていたのが嘘のよう。
それといいバーバーネタが作りたかったのです。



元ネタはこちら→
非腐&同人サイトではないので、こっそり見てこっそり帰ってきてください
迷惑がかかるようなことがありましたら、このリンクは削除します
made:D.C.9(2007)/10/10