職務を終えて家に着くと、妻は今日も木の下に居た。
その木は私よりも少しばかり高く、幹のてっぺんから上に向かって伸びた枝は途中でしなり、葉の影を地面に揺らしていた。
その内の一本の枝にはラグビーボール大のうりのような楕円形の実がなっており、妻はそれを胸に抱いて撫でていた。
「あなた、お帰りなさい。ジェイルは今日も変化なしよ。」
私に気付き、妻は実を撫でたまま口を開く。
ジェイルとは彼女が抱いている実のことである。
由来は「子供を閉じ込める檻だから。」らしい。
「早く子供を出してちょうだい」
と妻は今日も実に語り掛ける。
その木は私たちの子を孕んでいた。
数ヶ月前に妻は種を産み、日の照る庭に私たちはそれを埋めた。
それから妻は常に木に寄り添い、私もほぼ庭で過ごすようになった。
妻のために食事を用意し、庭に赴くと、彼女がせかすように手招く。
「産まれる」、と。
彼女が実の表面をなぞると、その軌跡にそって真っ直ぐな筋が走り、甘い香りのする膜に包まれた赤子が滑り出た。
赤子を受け止めた妻が膜を剥くと、赤子は産声をあげはじめる。
彼を胸に抱き、彼女は語り掛けた。
「こんにちは、ジェイル。この世にようこそ」
「実の名前を譲ったのか?」
「うん。この子は私たちのいっぱいの愛をため込むの。だから、この子はジェイル」
そう言って妻は笑った。
実につけた名前をそのまま持ってくる安直さに少し呆れたが、由来に納得してしまった。
「そうか。よろしくな、ジェイル」
そして私たちは生に溢れた産声を微笑ましく聞いた。
やっと文章化できたJ誕ネタ、です。
サイトにあるZとXが出会った話と並行して考えてたから……一年半越しですね(笑)
話の展開の順序とか、言葉とか、あとここではまったく触れていませんが、両親の設定とかがね、決まらなかったのです;;
一応
父→デーモン一族植物派・植物を操る能力
母→ネコ型植物系・植物そのもの
です
その二名から産まれたJさんはデーモン一族とネコ族の姿を持ち、かつ魔力を使わずとも自身の属性である植物を操れるという超(ぇ)混血児なわけです(笑)
D.C.11(2009).5.4