組曲魔王
要するに魔王に関する過去話
現在に至るまでこういうことがあって、こういう悪魔たちがいて、数名は現在も生きているという、世界・歴史設定強化のための話
※今回の話には構成員は登場しません
オリキャラばっかりさ!
地球が悪魔の手に落ちる、20万年以上前のことだ
ゼウスと大魔王の直接対決があった
その戦いを制したのはゼウスであった
大魔王が倒れる様を遠くで見ていることしかできなかった皇太子は怒りに吠えた
「遅くなりました。失礼します」
病室の扉を開けて男が入室する
「ご苦労。お前が忙しいことはわかっている」
ベッドに横たわる老悪魔が返す
彼の左足にはギブスが付けられ、ベッドに取り付けられた器具から吊されていた
二名の容姿はまるでヒトのようだったが、紋様の浮かんだ白い顔か非人であることを証明していた
銀髪の男の紋様は赤く、金髪の老悪魔の紋様は青い色をしていた
「やぁっとでかい任務が片付いたので報告にあがりました」
見た目のわりに若さの残る口調で男はポケットからジッポを取り出すと老悪魔に渡した
「またそんなところに入れて…機密は用心して持ち歩けと言っておるだろう!」
「大声出さんといてくださいよ。ジッポがポケットにあったっておかしくないでしょ、あとお土産」
そう言って別のポケットから箱を一つ取り出す
「これでカモフラージュは完璧」
箱のパッケージにはSLEEPING BEASTのロゴと二対の瞳が描かれている
「そういう問題ではない」
そう言いながらも老悪魔は体を起こすと、早速SREEPING BEASTの箱を開け、中から短い棒を取り出した
そしてジッポに見せかけた記憶媒体の蓋を開け、棒に火を点けると嬉々として吸いはじめた
煙を吐き出し老悪魔は尋ねる
「ところで陛下には報告したのか?」
「まだですよ。あいつ、天界がらみのことになるとすーぐ血が上るんで」
「お前……」
「や、冗談ですよ、冗談。報告には行ったんですが、追い出されました」
「何ヵ月もかけていたのだ。良い報告であろうな」
組んだ手を机の上に置き、魔王は言った
口調は穏やかで、口元には笑みが見えるが、作りこんだものだと男はすぐさま見抜いた
男の報告、天界に侵略された観測砦を奪還するための諜報活動の結果を魔王は真剣な顔で聞いていた
「よくやった。これで砦の奪還が容易になる。軍事局に知らせろ!会議を開く!」
報告を聞くや魔王は立ち上がり、宣言した
「今からかよ」
「無論だ」
「やめよーぜ?お前疲れてる顔してっし」
「何を言うか!こうしているうちにもゼウスは着々と信仰を集めているのだぞ!」
「我々も着実に信仰を集めてるさ。もー少し余裕を持ったらどうだよ。常にピリピリしてちゃあまともな判断くだせないだろーが」
魔王の目付きが少しきつくなる
「前の陛下が亡くなってからお前ソートーだぜ?それにいつ世継が生まれたっておかしくないってのに」
「黙れ!!」
魔王に怒鳴られ、男は口をつぐむ
「ゼウスを倒すまで休むわけにはいかんのだ!世継もいらぬ!そんなことよりも対天界に全身全霊をかけろ!」
「ゴネたら『帰れ』って言って吹き飛ばされちゃいました。どうしたんすか、あいつ。ずーっと前もピリピリしてましたけど、もっとまともでしたよ」
「ゼウスに取り憑かれたのだ。」
「はぁ?」
「ゼウスに勝つことしか考えず、自分の治世に固執し、衰退の影に怯えている。陛下が生きておればまた変わったかもしれんが……。次の副大魔王はまだ産まれんし、世継も産まれん。いつか魔界終了の知らせを出さねばならんだろう」
終わるだなんて大げさな。
男はそう言い掛けたが大魔王の様子を目の当たりにしただけに否定できなかった
「でも世継と次の副大魔王は待ってりゃ生まれるでしょう。」
ベッドに横たわる老悪魔こそ魔界の副大魔王であるが、彼の後を継ぐはずだった候補生は先の戦いで大魔王と共に戦死していた
「世継は生まれんよ」
「へぃ?」
「考えてみるがいい。陛下は今おいくつか、前陛下が亡くなって何年たったか」
「前陛下が亡くなってからはまだ一年もたってないっすよ。まぁ、年齢的にいつ生まれてもおかしかねーすけど…」
前陛下が亡くなった時点で現陛下はすでに成体となっていた
追い出されたときも、キレたのは世継の話が出てからだ
「まさか、とっくに……」
「世継はおらぬ。吾輩では止められなかった」
「……その怪我、転んだって聞きました」
「間違いではない」
「………急用ができました。失礼します」
「すまないが、任せてもよいか」
「自信はないですが、お任せあれ」
そう言い、銀髪の男は再び魔王宮にむかった
組曲魔王の「堕ちた光」は魔王43世と44世とその周辺霊者でお送りいたします
現在の魔界、ダミ様と44世の話である「魔王様と皇子様」に続く話……になる予定
オリキャラ劇場ですが、ご容赦をm(_ _)m
表に置いてますが、暗いのでご安心なきようお願いします
D.C.12(2010).2.14