森をさまよっていた。

木々は鬱蒼と生い茂り、薄暗い。
朝なのか昼なのかもわからない。
否、”朝”とか”昼”とかいう言葉も、それが何なのかさえこの時は知らなかった。

あてもなく私はさまよっていた。



森を歩いていた。
実験に使う薬草の採取のため、籠を持ち家を出た。
もう昼になろうというのに木々のせいで森の内は薄暗い。もっとも、ずっと続く雨のせいで森の外も薄暗いが。
雨の後の森はさらに湿気を含み、いつもより緑の匂いを強めていた。
悪魔の森の空気は魔力がこもっており、雨の後、晴れた日は魔界植物が活発になるため、更に魔力が濃くなる。
しかし、今日はやけに静かだった。
植物から感じ取られる魔力はいつもと同じく活発だが空気中に感じられる魔力は雨の後にしては微弱なのだ。
しばし周辺の魔力を探知しながら歩いていく。
薬草を採取するという目的は、異変の謎を突き止めるという目的に取って代わられていた。
魔力の塊を認知する。
植物の、ではなく動物だ。
魔力から何か生き物が生まれた。
思考がこの答えにたどり着く。
濃い魔力の淀みは時に新しい命を産むと聞いたことがある。
現にそうやってできた魔物は存在するし、実験で作ったこともある。
しかしそれでできた命は大抵か弱く低脳。
しかし認知された魔力は悪魔のそれとして十二分に評価できるものであった。
森に住む生き物としては考えられない。
なぜならその魔力の塊は悪魔の森を思わせるからだ。
好奇心にかられて魔力の塊へと向かう。
茎をかきわけ、伸びてくる蔦をあしらい、茂みを進んだ。
そこには、子供がいた。



「こんなところでどうしたの?」
声を掛けられ顔を上げる。
そこには、女性がいた。

「あなた、お名前は?」
「あなた」も「おなまえ」も意味を知らなかった。
「?」が質問であることさえ解からなかった。

「いらっしゃい。」
手が差し伸べられた。
微笑む女性を見るとなぜか安心し、私は彼女に向かって手を伸ばした。
彼女の腕が私の手を取り、彼女は私を抱き上げた。
「薬草の代わりに子供を採取しちゃった。」
その時の彼女の瞳はとても美しく輝いていた。
今考えれば単なる好奇心からの輝きだったのかもしれないが、私はそれに憧れを抱いた。
「家に帰ったら名前をあげる。」
この日の出来事は子供心にも鮮明に焼きつき、今でも昨日のことのように思い出せる。
私に初めて何かが与えられた日。
親、家、名前……
私に”私”を与えてくれた彼女は美しく…、そして巨乳だった。







はい!発生日捏造第一弾!ゼノン石川和尚です!!
悪魔の森が溜め込んだ魔力から産まれ、魔女に拾われたという設定になっております。
拾った方の口調には少々悩んでおり、変更するかもしれません。
そのときはなにとぞご了承をm(_ _)m

made:D.C.9(2007)/2/24