いつからいつまで気絶していたかどうかは定かではない。
自分が倒れていることだけ、なんとなく解っていた。


右脇腹に痛みが走り、視界が鮮明になった。
とりあえずゾッドは生きていた。
木にひっかかり、そのまま落ちたのだろう。周りには枝葉が落ちている。
このまま死ぬつもりはないので、負傷具合を確かめようと視線を自身の体へ映す。
思っていたよりも怪我はひどかった。
内臓のどれかが無くなったようではなかったが、傷からはあばらが顔を覗かせ、腸の一部が出ていた。
しかも、ネズミ(型をした魔物。頭部に無数の目を持ち、尾の先端が二つに分かれている)が三匹そこに群がってゾッドの腸の切れ端をもてあそんでいる。
さっきの痛みはこいつらが腸をちぎったせいかと合点し、感覚が麻痺していることに気付く。
予想よりも重体のようだ。
しかしずっとここにこうしていればいずれネズミ、もしくは他の魔物の餌になることだけは間違いない。
下手すれば魂ごと悪魔の森の糧となるだろう。

このまま死ぬつもりはない。
死ぬつもりはないが、何かをしようとする気もなかった。
仮に行動したとして、そのうち力尽きるのは目に見えていた。
行動するには重症すぎたのだ。
「これも命運…か」
言葉ではなく、そういった概念だけが頭に浮かんだ。


いつからいつまで気絶していたかどうかは定かではない。
自分が眠っていたことだけ、なんとなく解っていた。

意識はまどろみの中にあった。
周辺の感覚から、先程倒れていた場所とは違うことを悟り、意識は一気に覚醒した。
跳ね起きようと体に力を入れる。
途端に右脇腹に痛みが走った。
「…ぐっ」
痛みと悲鳴を同時に堪える。
大きな音を出せば魔物に見つかる恐れがある。と言うか、自分的に情けない。
「起きちゃ駄目だよ。大怪我してるんだから。」
のほほんとした声がした。
ゾッドはベッドに寝かされていた。
木でできた質素なベッド。
少し離れたところに悪魔がいて、彼は椅子に腰掛けていた。

妙な悪魔だとゾッドは思った。
目の前の悪魔を警戒し、魔力を探ったが掴みどころがない。
敵意は感じられないが、奥が見えないためにどうも胡散臭い。
まるで、悪魔の森のようだ。

「なんであそこで倒れていたかは知らないけど、とりあえずヨロシク。私はゼノン。」
ゾッドの考えを知ってか知らずか悪魔は笑いかけた。
その笑みからは純粋な好奇心と魔懐こさが感じ取られた。
「俺は……ゾッドだ。」
ボソリとゾッドは返した。






たいして血生臭い内容ではないのですが、最初のとこだけ書き方がグロい…かな?
とにかく和尚と親分が出会いました。

まだ続きます。

made:D.C.9(2007).3.15