今日もジェイルは夜遅く帰ってきた
魔都のマンションで独り暮らしをしているのだが、部屋の明かりがついていることに気づいた
誰がいるのかは容易に想像がつき、嬉しくなった
しかしドアを開けるとそこには誰もいない
置いてある靴は確かにルークのものである
変な服で出迎えたり、変な物を突き付けられるよりもマシだが、いなければいないでやはり寂しい
リビングに入ると「おかえりー」と声をかけられた
「ただいま」と言おうとしたが、tの音が出る前にジェイルは固まった
「出迎えようと思ったんだけどさー」
机の上にはルークの服が置いてある
「髪に絡まってうまくつけらんないの」
上半身だけ裸になって、ルークはブラジャーをつけようと奮闘していたのだった
「ちょっと手伝ってよー」
ジェイルが無言でホックをかけると、ルークは前を整える
「…何、それ?」
ようやくジェイルが言葉を発した
「何って、ブラジャー」
ルークは特に気にしていないようだ
「なんで?」
「なんで…って、優しくなりたいから」
「やさしいでしょ?ジューブン」
「女性みたいな優しさを手にいれたいときもあるの」
「……そーなんだ………」
許せるけれど、理解できない…とジェイルは内心で思う
だけど、似たようなものをどこかで見たような気がする
もちろんそれは女性用ブラジャーではなく、むしろ屈強な男が付けていたような……
「……………それ、本当にブラ?」
とある物に思い当たり、ルークに尋ねる
「うん、ブラ」
簡単な返事が返ってくる
「ただのブラ?」
もう一度問いかける
「うん、ただのブラ」
「大胸筋矯正サポーターじゃなくて?」
心当たりを告げる
トレーニング中の軍魔が付けていたのを思い出したのだ
「違うよ、ブラだよ」
しかしルークは否定する
「軍人らしく胸板も鍛えるとかじゃなくて?」
もう一度確認する
「ないない。それに俺がムキムキになったら気持ち悪いでしょ?」
「そうだけど……やっぱり大胸筋矯正サポーターでしょ?」
「違うよ!そんな実用的なものなわけないじゃん!これはブラ!ただのブラ!」
「そう見せかけておいて実は…」
「ないって!布でしかできてないし!」
「魔動式の可能性もあるでしょ?」
「ないない!あ、着る?そーしたら解るよ」
「やだよ!」
「これがただのブラだって証明するにはそれしかないでしょ!さあ、着ろ!」
そう言い放ち、ルークは自分の背中に腕をまわす
「わかった、わかった!ブラ、ただのブラ!!」
「わかればよろし〜い」
ルークはニンマリとほほ笑んだ
楽天で男性用ブラジャーが人気と聞いて生まれたネタ
↑h ttp://item.rakuten.co.jp/wishroom/mensbra/
大胸筋サポーターの下りがやりたかったとも言います;
D.C.11(2009).3.1:オエビからの収録