遊廓妄想〜号外〜


「号外、号外!鼠小僧がまた現れたってよ!」
高らかな声と共に瓦板がばらまかれる

ぶらぶらと街を歩くルークの前にも瓦板がひらひらと降ってきた
紙面には大きな字で「鼠小僧またまた現る!」と書かれている

鼠小僧とは最近巷を賑わせている泥棒である
しかし盗みに入るのは常に性根の悪い金持ちの家である
今度狙われたのは豪商のドラ息子が大切にしていた金の花魁像らしい

「ルークー!!」
声のした方をみやると、ライデンが走ってやってきた
「ライデン!花街の外で会うなんて初めてじゃない?」
「そー言えばそーかも。こんなとこで何してんの?」
「散歩の途中。ライデンこそ何してんの?」
「俺はバイト。」
「バイト?」
小首をかしげてルークが尋ねる

「瓦板をばらまくバイト。誰よりも早く瓦板が読めるんだぜ」
「それはー、よかったね…」
「俺、記者の卵だから」
ルークの適当な返事を気にせず、胸を張りふふんと笑う
「そーなの!?すっげー!」
記者、の言葉に反応する
「まだ勉強中ダケドネ…」
「でもさ、なんで遊廓で働いてるの?」
ルークの素朴な問いにライデンはちょっとばつの悪い顔をする
「えっとー、それは、ね、店ん中の物壊しちゃって……、そんな顔すんなよ。弁償終わってるから!」
同じくばつの悪い顔をしたルークにライデンが慌てる
「そんで、ケッコー楽しかったから今もやってんの。これ店まで持ってくのも俺の使命だし」
と、今までばらまいていた号外をルークに見せる

「腹減ったし、これ店に持ってったらなんか食わね?」
「うん。いいよ。何食べたい?」
「カツ丼かなー。そんでお好み焼きにー、うなぎにー…」
「それ全部食うの?」
「あったり前じゃん!」


まだ日の登りきらないころ、二名は花街の方向へと歩きだした










ライデンも遊郭外の方。
遊郭で働くようになった理由は次で。

D.C.10(2008).10.31