遊廓妄想〜番頭奮闘記3〜
「騒がしかったけど、何が起きたの?」
「お客さんが大喜びで出ていったの」
用心棒たちが男を外に放り出した後、再び番台にルークが現れた
「手足が六本に目は6つ。筋肉質で色白。そんなニッチな遊魔がいたから大喜びってわけ」
「はあ?」
ゼノンの言葉に首をかしげる
しばらくして帰ってきた用心棒たちにゼノンが「おつかれー」と声をかける
それに続いて男が一名ついてきた
「よぅ」
「いらっしゃいませー」
この男は遊廓の常連である
初物が食いたいという理由で開店後まもなく現れる
「今日は誰にする?」
「そうだなー」
ゼノンが広げた細目を見ていたが、ふと顔をあげ、ルークを見た
「新しい子?」
「バイトです!」
指を差す男にルークはすぐに返答した
度々遊魔と間違えられているため、正直うんざりしている
「この子いくら?」
ルークの答えを無視し、男はゼノンに問い掛ける
「無視しないでよっ!」
「ね、いくら?」
「売り物じゃないんで…」
「ちゃんとお金払うからっ」
おねが〜いと手を合わせるが、男がやってもただ気持ち悪いだけである
「……………遊魔じゃないんで格子並みの料金かかりますよ?」
「いーよいーよ、全然いーよ♪」
「ゼノン裏切ったなっ!俺売られるつもりなんて無いからねっ!」
踵を返して裏方へ行こうとするも、さりげなくゼノンが袖を掴んで逃がさない
「オッケ?」
「毎度あり〜」
「なにが毎度だよ!やだっ、い〜や〜だ〜!」
騒ぐルークを肩に担ぎ、男は笑顔で去っていった
「丸沢の団子はやはりうまいな。感謝する」
「ごちそーさまー」
「どういたしまして」
団子を食べ終え、三名は淹れたての緑茶をたしなんでいた
満足気な二名に女性はコロコロと笑った
「ところで石川君一名で大丈夫なの?」
「大丈夫だろう」
ライデンの問いにデーモンが答えるが―
「素人を売るなぁっ!!」
玄関の方からジェイルの怒鳴る声が聞こえる
「…違ったようだ。」
―撤回した
「そろそろ戻った方がよさそうだな」
「俺先に行ってるねー」
そそくさと野次馬に迎うライデンと自身の発した言葉とは裏腹に、デーモンは急須から新たに茶を注いだ
それをゆっくり時間をかけて飲み干すと
「もう少しゆっくりしていくがいい」
残っていた客にそう言い、デーモンも玄関へと向かって行った
ゼノやんのお留守番、失敗
D.C.10(2008).10.31