遊廓妄想〜鷹とまゆしろ、鷹とジェイル〜
まゆしろの部屋にて
「……確かに」
身請けの金額を確認し、デーモンは言った
「祭りまでに間に合ってよかった」
鷹はそう言って笑った
まゆしろもつられて笑う
並んで座った二名の間を互いの手が繋いでいる
「嫁入りはいつにする?」
金を横にやり、デーモンが訪ねる
「できるだけ早く、明日にでも一緒に帰りたい」
迷わず答える鷹に、まゆしろは頬を染めた
「わかった、手配しよう。ところで、祝いの宴をさせてくれないか?お前もまゆしろも皆に愛されている。今生の別れ、ではないが引き取りに来てそれでおしまいでは寂しいからな」
「ありがとうございます」
デーモンは身請け金を金庫に納めると、玄関に出て看板を立てた
その真ん中に紙を貼りつける
内容はこうだ
『本日貸し切り』
デーモンに連れられ、まゆしろを身請けすることを大奥にて鷹が伝えると黄色い歓声があがった
「おめでとう」「やっと!?」「幸せにしてあげてね」
など遊魔や客たちがひっきりなしにやってきては口々に何やら言い募る
ちょっと困った顔をしながらも鷹は「ありがとう」などと応えていた
「言いたいことは言ったか?そろそろ仕事に戻れ」
デーモンが制止すると皆ブー垂れながら戻っていった
「宴は…一角獣の刻には始められるだろう。それまで好きにしていてくれ」
デーモンからそう言われ、鷹は声援やら拍手を送られながら大奥を後にした
まゆしろの部屋にある五階に上りたかったが、大奥を突っ切るのは気恥ずかしくてできず、エレベーターで上がろうと玄関に出た
その時ちょうど麻雀仲魔と共にジェイルが遊廓に帰ってきた
「鷹さん、もう帰り?」
仲魔をほっぽり、ジェイルは鷹の下へ行く
仲魔は仲魔で受付で開き部屋を確認する
「これからまゆしろんとこ」
鷹がそう応えると
「どっか遊びにいこーよ」
とジェイルが誘う
「お客は?」
「あいつらはなじみの客っつーか、悪友だからいーの」
ジェイルはそう言うが、
「なじみの友達なら尚更大事にしなきゃダメだろ」
と鷹に諭されるばかりである
「…じゃあ、今日はいつまでいるの?」
ちょっと、ふてくされた声でジェイルが聞く
「ずっといるよ。あ、まゆしろの身請けが明日に決まって、デーモンが祝いの宴開いてくれるって」
鷹はニパニパと笑いながら言う
身請けが決まったこと、デーモンに宴を開いてもらえることなどよっぽど嬉しいらしい
「ってことは貸し切り…って」
「そう、俺」
「……いつから?」
「何が?」
目的語の無い質問に鷹は苦笑して聞き返す
「宴会」
「一角獣半にはできるだろうって」
「じゃあ、そんときに俺の三味線聞いてよ?すっごくうまくなったから!」
「うん、楽しみにしてるよ。」
鷹はそう言うとエレベーターに乗った
ジェイルたちもエレベーターを使うのではないかと気付き、彼に視線を送ったが、ジェイルは「いい」と手を降った
「…何笑ってんだよ。おまえらは階段でジューブンなんだよ」
ジェイルは悪友を引き連れ、大奥を抜けて二階へと行く
物語中の時間は悪魔の十三支を用いています
つまり一日26時間だ!
D.C.11(2009).1.26