遊廓妄想〜身請け〜
結局ルークは帰るタイミングを逃し、悪魔の穴で一晩を過ごした
翌朝、騒ぎ疲れた遊魔たちに替わり、喜助たちがまゆしろの荷物をまとめ始め、その様子を見ていたり手伝ったりしていた
段ボールのような質素な箱に次々と小物が納まっていく
昼前には荷物はすべてまとめられ、喜助が鷹の家へと持っていった
鷹はまゆしろの着付けが終わるのを玄関で待っていた
本来ならば荷物は上等な入れ物にまとめられ、遊魔も少々派手に着付けられるもので、更に身請け先へと花魁道中ないし籠に乗って迎うものである
鷹には身請けに加えてそこまでできる金と身分は無かったが、二名で手を繋いで帰りたいというのが彼の望みであった
着付けを終え、まゆしろが現れる
花嫁や姫というよりも、これからデートに行くような格好である
「デーモン兄さんがこれを用意してくれたの」
白地に金の刺繍をあつらえた新品の着物は姫蚕の出す柔らかな絹糸でできていた
「…ありがとうございます」
鷹の言葉にデーモンは
「吾輩だけではない。皆からの餞別だ」
と笑って返した
「待って、待って」
ジェイルが外から入ってきた
草履は履いておらず、端遊魔の大部屋である四階から雨どいや窓を伝って降りてきたようだった
「よかった、まだいた」
ジェイルは手に持っていた紫色のひらひらした紐のようなものを
「幸運のお守り」
と言ってまゆしろの髪に結った
「兄さん、これって…」
まゆしろが笑う
それはジェイルが大切にしているコレクションのひとつであった
「一番綺麗なやつ、探してたんだ」
ジェイルはそう言うと、今度は二名に向かって
「幸せになれよ」
と笑った
ジェイルの瞼は腫れていたが、デーモン一族の紋様がそれを隠してくれていた
紫色のひらひらしたのが何か、信者さんならわかりますよね(笑)
これで本編20作目!(≧w≦)
全然自覚がありません
D.C.11(2009).1.26