「小林さんは“植木くん”って子を担当してるそうです。」
「へぇ。そーなんや。」
―小林。ワンコが尊敬しとる奴。そいつのこと話しとる時のワンコはほんま、楽しそうな顔しよる。
ドグラマンション 地下
大縄対決時。
ロベルト十団に入ったオレは、それを潰そうとする植木と戦うことになった。
結果はオレの場外負け。
…のハズやった。
今、オレはフィールドに片手をかけた、宙ぶらりんの状態や。下はマグマの海。手を離せへんワケはそれちゃう。
「佐野が負けたら犬丸とかいう神候補が、植木が負けたら森と鈴子が死ぬべ。」
カルパッチョのやつがアホなことゆうたせいや。
植木が負ければ地上人である森と鈴子は腕輪の毒で死んでまう。
「何言うとんねん!話がちゃうやろ!」
せや。植木たちの勝ち負けの条件はそれやけどオレにはそないな条件なんかあらへん。
「わざと負けようとしてる奴が言えたことだべか?」
ニヤニヤと笑いながらカルパッチョはオレが十団に入った理由をベラベラと流してしもた。ワンコが動揺しとるのが遠目でもようわかるわ。
「佐野、お前十団に入るべ。」
何日か前、オレはいきなりこう言われた。コイツはその時もニヤニヤと笑っとった。
ロベルト十団は強力な集団やと有名や。せやけどそいつらの主義はオレの正義に反しとる。もちろん断るつもりやったんやけど…
「あんたの担当神候補には俺の血で冬眠させた地獄界の生物を付けたべ。そいつが目ぇ覚ましたらあんたの担当神候補はソイツに血ぃ全部吸われておだぶつだべ。これでお願い聞いてくれる気になったべか?」
は?
「なんやそれ!お願いやのうて脅迫やないか!?」
それでオレは、能力者10人を倒すことでワンコに付けた生物を剥がすことを条件に十団にはいったんや。
「犬丸…お前はなぁ、オレにとって最大の“親友”なんや!!!親友の命ひとつ守れん正義に、一体なんの意味があるっちゅうんや!!!」
「早く植木と戦わんと『大事な』犬丸が死んでまうべ?」
カルパッチョの奴、やけに『大事な』を強調しよるな…。人の気も知らんと‥その顔ぶっとばしてやりたいわ!
…ちくしょう。
「ク…フフフ、ハハハ、アハハハハハ!!」
「ワンコ…?」
ワンコが急に大声で笑うた。一体、どないしたんや?
「なんということだ。僕のせいで佐野くんが苦しみ、森さんと鈴子さんの命が危険にさらされている。もう少しで僕は間違った決断をするところでした。」
笑顔で話しだして…何するつもりなんや!?
ワンコが森に手をかざす。
「このルールを破った者は自動的に地獄に堕ちるよう神候補の体にインプットされています。」
!?
「地獄?地獄はここだべ?オメー、何言ってるべ?」
ワンコがカルパッチョに返す。
「我々の行き先は地獄の奥底の牢獄。そこに堕ちた者は皆死刑となる。もはや君が僕を殺すことになんの意味もない。」
なんやて!なんでそうなるんや!?
ワンコが森に能力を与えてもうた。途端に地獄へのゲートが開く。皆驚いとる中、余裕そうに話しとる。
「なんでだよ!なんでコバセンも犬のオッサンも勝手にいなくなるんだよ!?」
植木が叫んだ。
「それが僕たちの正義だからだ。」
ワンコはそう返した。
…笑とる?
「佐野くん…!僕は君の担当神候補になれて本当によかった。」
「ワンコ…?」
なんでそないに落ち着いとるんや?
「君は僕の親友………そして…僕の“誇り”です。」
「『小林さん』かぁ。そいつのコト、好きなんか?」
「もちろんです。尊敬してますから。」
「ちゃうちゃう。“愛”しとるんか?」
「………!!!」
……オレ、冗談のつもりやってんけどなぁ‥ワンコ真っ赤になってしもた。…解りやすすぎやっちゅうねん。
ちゅーか図星やったんや‥。
「向こうにどう思われとるん?」
「嫌われ‥てはないと思いますが‥。」
「告白せぇへんの?」
「でっ‥できるわけないじゃないですか!!」
耳まで真っ赤になったワンコに否定された。
「それに…彼には好きな人がいますから。」
え?
「だからこのままでいいんです。」
「………」
「そういう佐野くんはどうなんですか?」
お返しとばかりに聞かれた。
「は?オレ!?」
予想してへんかった質問に、オレの声は裏返ってしもた。答えは決まっとるんやけど。
「おらん。」
「それじゃ僕の言い損じゃないですか!」
「おらんもんはおらんねん。しゃーないやんか。」
嘘や。でも勝てへん勝負はしたない。もっと強なって、もっと自分磨いてから言いたいねん。
そうして先延ばししてたら、このザマや‥!
「さらば……佐野くん!!!」
そう言うて、ワンコは消えてってしもた。
何言うとんねん
「なんで『さらば』やねん。」
オレまだ
言いたいこと言うてへん
「ワンコ…!!!!」
『ワンコのこと好きや』って
言うてへん
言うてへん
言うてへんのや!!!!
え〜と、うえきの法則のワンコが地獄に落ちる場面読んだ時からこれ考えてました。
佐野→犬丸→小林→植木です。一番かわいそうなのは誰でしょ〜って問題にもならんな。
話内で佐野の気持ちをカルパが知っているかどうかは読者の判断に任せます。筆者にはどっちもおもしろいので決められません(ヲイ)
それを踏まえてカル佐野とかどう?(再びヲイ)
最後はタグ使いまくって目が痛かった!
作成日:2004.07.24
金籠収録:2009.08.01