Jack the Ripper 01


一本のナイフを拾った。とても切れ味がよかったのでむかつくアイツを殺してやった。
今日はなんてハッピィディVv


切り裂きジャック


《今日未明、川波区にあるもみぢ銀行の裏でまた女性の刺殺死体が見つかりました。》
どこにでもありそうな市街地。
電気屋のショーケースに並べられたテレビは一様に同じ画面を映し続ける。
《これで発見された死体は三体目です。》

「またこのニュース?聞き飽きた〜!」
「でもこの銀行のある川波区って一つ駅向こうだよ?」
「うそ!?」
綺羅はテレビから隣の親友へと勢いよく顔をむけた。耳の上のおさげもいっしょに跳ねる。
「じゃあ犯人以外と近くにいたりして。」
「やだよ、ここで事件おきるの。」
嘉凛は不安そうな顔をする。
綺羅と嘉凛は近くの公立高校の一年生だ。
綺羅は身長150cmと小柄で中学生とさほど変わらない。茶色がかった髪をツインテールにしている。
嘉凛は160cmと背が高いが大柄ではない。脇までの髪を横髪が落ちてこないようにピンで止めている。
二人は小学校来の親友で、毎日二人一緒に登校している。

《手口が似ているため、警察は連続刺殺殺人事件として扱う意向です。》
市街は連続刺殺事件に悩まされている。
事件の発覚は二週間前。
今回の事件が起きた川波区の隣の区にて、区内活動として川の掃除を行ったところ、藻にからまった女性の死体が見つかった。
女性の死体には無数の刺し傷があり、殺人と認定された。
次の事件は9日前だ。
公園の茂みの中でまた女性の死体が見つかった。顔をメッタ刺しにされていたため身元がなかなか判明しなかったという。
被害者そのものには共通点がなく、どちらも川波区の隣の区での事件であったが、二番目の事件の現場の方が今回の事件現場より遠い。
《不審な人物をみかけたらちゅう―》

どかっ

嘉凛は電気屋の角から走って出てきたサラリーマンとぶつかり、尻餅をついてしまった。
「いたたたた‥」
「大丈夫〜?」
綺羅も心配そうに嘉凜に近寄る。
「私は大丈夫それよりも‥」
ぶつかってきたサラリーマンはばったりと倒れていた。
「大丈夫か?」
電気屋の角から制服姿の少年が現れた。
綺羅と嘉凜を見て、倒れているサラリーマンに気付く。
「あんまり近づくなよ。」
「え?」
少年の言葉に嘉凜が答えたときに、サラリーマンがいきなり立ち上がった。
そして叫ぶ。
「ハッ 俺はどこ?ここは誰!?ってゆーか会社に遅刻する!!!」
そのまま全速力で駆け出していった。
呆然とする綺羅と嘉凜。
二人もあることに気がついた。
「学校遅刻する〜〜〜!!」
電気屋の前には少年が一人残された。

がらっ

教室の戸が勢いよく開く。
「アウト!?セーフ!?」
綺羅の声が響く。
二人一緒に走ってきたため綺羅は軽い息切れ、その後ろで嘉凜は膝に手を置いた姿勢で息をきらしている。
「綺羅、嘉凜、セーフだよ!こんなギリギリに来るなんて何かあったの?」
クラスメートの繭璃が声をかける。
「ちょっと電気屋のTV見てたらねー。」
綺羅が一部始終を話す。
「あははははっ!ぶつかるなんて災難だったねー!」
「////えーと‥」
嘉凜は赤面した。
「で、そのサラリーマンと高校生どんな感じだった?」
繭璃が詰め寄る。
「どんなってー」
とりあえず嘉凜が紙に描く。
「ルックスのことだったらたいしたことないよ?」
綺羅がつけ加えた。

できあがった絵を見て繭璃が一言。
「これ陽光学院の制服じゃん。」
「陽光学院?」
「そんな学校あったの?」
「うちの従兄弟が通ってるんだけど、神学とか宗教学やってるんだって。」
「へぇ〜。」
「でもここから遠いんだよね。学校が始まるって時に何してたんだろ。」


キーンコーンカーンコーン…
始業を告げるチャイムが鳴る。
チャイムと同時に教室に入ってきた英語の教師は紙の束を持っていた。
教卓につき、宣告をくだす。
「それでは、テストを返します。」
生徒の悲鳴が響いた。