Jack the Ripper 02


昼休み

綺羅と嘉凜は屋上にいた。
「もーイヤー!補習なんて受けたくないよー!」

英語教師のセリフが蘇る。
「今回は貧富の差が『あまりにも』あったので、50点以下の人は明日の放課後に補習します。」

「そんなこと言わずにがんばろうよ‥」
ちなみに嘉凜は補習の必要はない。
「嘉凜はわかってない!」
綺羅が嘉凛の鼻先にびしっと指を突き付ける。
「補習はイヤだけどそれがイヤなわけじゃないの!先公がイヤなの!あのぽってりとした体!青ジョリ!油ギッシュな顔!やらしい目付き!イヤイヤイヤイヤ大嫌い!」
「そこまで言わなくてもι」
「あ、そうだ。」
綺羅はポケットから一本のナイフを取り出した。
「これよ!これであの先公を一突きに‥」
「ななな何言ってんの!」
暴走しそうな友人に待ったをかける。
「っていうかそんなのどこから‥」
「拾ったの。」
「拾ったぁ!?」
「そうそう。朝、リーマンとぶつかったじゃん。その時に落としてったの。」
「それってドロボーなんじゃι」
「嘉凜はあのリーマンが殺人事件の犯人だって思わないの?」
「え!」
「だってどー考えても怪しーじゃん」
「そういう問題じゃないでしょ。」
「でもこれで先公殺っちゃったら補習無くなるよね。」
「綺羅!!」
「冗談だって。」
「冗談でもだめだよ。」
「ハイハイ」


放課後

「あーあ明日は補習かー」
「たった一時間だよ、がんばって。」
「う゛〜〜」
まったく違う部活に入っている二人だが、都合の合う日は一緒に帰っている。
最近は殺人事件のせいでまともに部活すらできないが。
分かれ道にさしかかる。
「じゃあね綺羅。」
「またね嘉凜!」
「あのナイフちゃんと交番に届けなきゃダメだよ。」
とりあえず釘を刺しておく。
「はいはい。」
こうして二人は別れた。


嘉凜の姿は見えなくなったが、綺羅はまだそこに立っていた。
「交番に寄って、勉強か〜、やりたくないな〜。」
"じゃあやらなければいいじゃないか。"
不意に声が聞こえた。
「!?」
"理由があるのだったら失くせばいい。"
「誰?」
辺りを見回しても誰もいない。
"やりたいこと、やればいいのさ。"
肩に触れられた。
振り返るとそこには男がいた。