Jack the Ripper 04


「待って!!」
後ろから声をかけられ、振り返る。
今朝見た少女がそこにいた。

「あなた綺羅を追ってるの!?」
息を切らしながらも、大声でこちらに叫ぶ。
「綺羅が拾ったナイフ!あれ、サラリーマンが落としたんでしょう!?」
少女はさらにまくしたてる。
「今日の綺羅おかしかった!あのナイフのせいなの!?ねぇ、何か知ってるのなら教えて!!」
ハァハァと荒い息を繰り返し、彼女は黙った。
彼の返答を待っているようだった。

「俺は」
少年が口を開く。
少女に聞こえるように大声で返した。
「俺は何も知らない。朝追っていたのは、サラリーマンだし、君の友達のことも知らない。」
それだけ言い、嘉凜に背を向け再び走り出した。

そうだ。俺が追ってるのはナイフの方だ。
心の中で少年は返した。
ちらりと振り返ると少女は立ちつくしていた。
君には悪いが関わらせるわけにはいかない。

なにせあいつは────




綺羅はものすごいスピードで走っていた。
陸上部トップの駿足、スタミナに加え、今日はなぜかあまり疲労を感じない。
それなのに。
自分を攻撃した少年を見失ってしまった。
「っも〜〜〜!!」
足を止めて悪態をつく。
見失っては追いようがない。
綺羅は来た道を戻ろうとした。
"上だ"
声がした。
上を見上げると少年が降って来た。
身の丈ほどの大剣を手にして。

少年の奇襲を綺羅はギリギリでかわした。
少年の振り下ろした大剣が地面へと埋まる。
しかしそれは難なく引き抜かれた。
その後に痕跡はない。
着地と同時に少年が綺羅へ攻撃を仕掛ける。
水色という、人間にありえない色の髪の奥で、金色の瞳が殺気に光っていた。